単純デザイナーの感化される日々 vol.3
「おいしい」を追求する人

エッセイ

10年以上お付き合いのあるパティシエの方から新店舗に向けてネーミング、ブランディングとパッケージの依頼をいただき、ついに!と、私も心が躍りました。  
その方は昔から「おいしいものが好きです」と口癖のように言っていましたが、正直そんなの当たり前なのでは?と思う事も。 


今回は、その方にとって「おいしいもの」とは何なのか聞き出すチャンスだと思い、 コンセプトの軸を見つけるための取材を行いました。

(以下 オーナーシェフの池田さん)
「昔からおいしいものが大好きで、初めは料理人を目指していました。 一流の料理人になりたいと強く思っていたので、最初はフレンチレストランで働いていましたが、 料理をやっていくうちに、お菓子を作る工程の方が好きなことに気付きました。 


お菓子は科学的、理論的に全部説明する事ができるので追求がしやすい。 料理は感覚に頼ることが多いですが、 私は感覚ではなく、きっちりしていることが好きなので、料理人からパティシエに転身しました。  


おいしいものを作るための探求作業は研究に近い。

一つのことを改善するためには、温度、時間、量、水分量等全てを見直さなくてはいけなし、 理論・理屈がわかっていないと、改善の方法が見つからない。  

パティシエだからケーキだけを追求する若手も多いですが、 レストランに足を運び、スイーツ以外のものもたくさん食べてみて研究する方が、  いろいろな「おいしい」に出会えます。  


また、日頃食べているものに対しても点数をつけるようにしています。普段「5点」のものを食べていたら、6点のものは作れる。でも、「9点」のものはつくれない。 


判断基準を作るためには、色々と高い判断基準を作らなくてはいけない。 作る知識はあっても、目標となる味を決めるためには自分が「10点」と思えるものに出会わなくてはいけない。


私のなかで「10点」と思えるものは、流行りのものではなく、 昔からある王道のお菓子です。  


フィナンシェやシュークリーム等の歴史は長く、 何年も何年も職人が試行錯誤し磨き上げてきました。 美味しく、飽きられる事なく、今も多くの人に愛されています。 


今時の流行り、斬新なもの、インスタ映えするものなど… 仕事上、私も意識して食べに行ったりしましたが、 記憶に残るものに出会う事はなかなかありませんでした。 そしていつの間にか消えてしまったブランドも。 しかし、クラシックなお菓子に流行りはありません。 


店名の「プレファレンス」はフランス語で「お気に入り」という意味です。 とても悩みました。古典的で今っぽくないという意見もいただきましたが、 「流行る」ことが目的はないので、なおさら私のやりたいことに合っていると思います。 


何年経っても、「私のお気に入りのお菓子はプレファレンス!」と 言ってもらえる存在でありたいです」  


実は「おいしい」という言葉は、取材をする前からコンセプトにしようと思っていましたが、 当たり前で、シンプルな言葉だからこそ、もっと何か捻ったコンセプトは見つからないだろうか …と何度も何度も検討しました。  

取材後、そんなものは必要ないんだと確信。あぁ、本当においしいものってこういう人が作るんだ。  


その人が持つ信念こそコンセプト。 話し導き、一緒に辿り着くことが私たちの仕事…。わざわざ生み出す、なんて必要ないんだと改めて実感しました。  


それから、プレファレンスのお菓子やパンは、 私が「おいしい」と思える、 お気に入りのお菓子となりました。

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パティスリー & ブーランジェリー
「プレファレンス」

・インスタグラム
・オンラインストア


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>>>仕事内容はこちら

「単純デザイナーの感化される日々」 奥谷知未
昔から感化されやすく、 この仕事をはじめてから様々な職種の人と出会い、 目標や悩みを聞くことが増え、慌ただしく影響を受けています。 自分でも思う「単純」な性格。 時に面倒なこの性格ですが、単純は楽しい。 仕事や日常で受けた刺激を紹介します。

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